mont-bellの子供用登山靴「マリポサトレール Kid’s」のレビューです。
目次
着脱と調整を容易にする「リールアジャストシステム」
マリポサトレールKid’sは従来のシューレース(靴紐)やベルクロ(マジックテープ)ではなく「リールアジャストシステム」を使用したワイヤーレースで締め上げを行うシステムです。
タン上部にあるダイヤルを時計方向に回すとワイヤーレースが巻かれ締め上げるような仕組みになっています。
boaフィットシステムはBoa Technologies社が開発したもの。
ワイヤーレース通り穴最上部はプラ製のガイドが内蔵されており、直接ナイロン地に傷がつかないようになっています。理由は不明ですが後継製品にはこのガイドが無いようで・・・。
ダイヤル部をつまんで上方向に引っ張るとテンションが外れ、タンを前方に引くだけでワイヤーレースが緩みます。
特記するほどの特徴はありませんが、滑りにくく泥はけの良さを考慮したソールになっています。
チビワンに合わせた20cmサイズです。「WIRE: 75cm」とあるのが交換用のワイヤーレースの長さです。替えは同じ長さのものを使用します。
防水透湿仕様
最近のmont-bell製子供向けシューズ/ブーツにおいて「登山向け」とされるものは防水機能が前提となっているものがかなり増えてきました。このマリポサトレールkid’sも同様に防水仕様となっています。
我が家では雨天時や荒天が予想される時はなるべく登山は避けるようにしていますが、登山においては渡渉、泥濘、水溜りは好天時であっても避けられないので、やはり防水透湿機能があるに越したことはありません。
フィールドレビュー
子供本人による着脱・調整がとても容易
実際に大菩薩嶺~大菩薩峠~石丸峠周回登山にて履いてきました。
従来の靴紐(シューレース)だと、仮に子供が絞めたものであっても大人としてはチェックしたくなる心理が働きます。また締め付けの強弱は履いている本人にしかわからないため、大人が何度も微調整を行うのは結構な手間。子供のほうも次第に面倒臭くなってきて「大丈夫」と言ってしまうことも。しかしこのシステムであれば締め付け具合は子供本人の感覚で素早く調節ができるのでそういった問題が起こりません。
よりフィット感を求めて少々きつく締めてしまいがちになることもあります。最初はよくても後々痛みや痺れにつながることもありますので、「あまりきつく締めすぎないように」という注意くらいはしておいたほうが良いかと思います。
登山靴の着脱は登山開始時・下山時のみとは限りません。靴内に小石が侵入したのでちょっと脱ぎたいといった時にはこのリールアジャストは有効です。
子連れ登山では小川でちょっと水に浸かりたいなんてことも。この日もそのリクエストがありましたが、子供だけで着脱可能というのは親としてとても楽です。
リールによる均等な締め付けによる弊害は?
リールアジャストシステムには、締め付けが完全に均等がゆえに、下山時に指先が痺れるなどの問題も以前から噂されています。大人用のものは足の甲と足首部分との2カ所別々にリールを設けることで改善がなされてはいるようですが、この子供用ブーツの場合は一か所のみです。
改善がされていないのか、子供サイズであれば1カ所だけも問題無いのか、その真偽は定かではありません。実際、今回の大菩薩嶺でのハイクでは、下山時にチビワンが足先の痛みを訴えましたが、下山時は以前の靴でも傷むことがあったのでこれがリールアジャストならではの弊害なのかどうかも不明です。
これに関しては、そういった事例もあるということを認識しつつ、何度か使用してみてまたその後のレビューができればと思っています。
メンテナンス
購入後にやっておきたいワイヤー交換
使用中にワイヤーレースが何らかの事情により切れてしまった場合などは、専用の交換ワイヤーレースを使用することで対応が可能です。モンベル・カスタマーサービスでも有償にて交換はしてくれますが、山行中となるとどうしようもないので念のため予備としてのワイヤーを持参しておくことをお勧めします。また後述しますが事前にワイヤー交換を一度行っておくことを強くお勧めします。なにせ面倒なので・・・。
交換方法は製品に同梱された紙マニュアルにも記載されていますが、Web上でもPDFが入手可能です。
同じくメンテナンス用のドライバーが同梱されています。通常の+や-の精密ドライバーではありません。専用ドライバーとして付属はしていますが、ネジ自体はヘクスローブの規格なので、T6トルクスドライバーであれば代用可能です。
ドライバーをダイヤル中心部の穴に挿し、反時計方向に回して緩めます。
ダイヤル本体の内部はこんな感じになっています。
リールアジャスト部の内部です。戻す時はこの状態がゴールです。
内部のギア部分(ボビンのような部品)は少々外れにくいので、傷をつけないようドライバーなどでゆっくりと持ち上げます。
外すとこのようにクロスする形でワイヤーが通っていることがわかります。
写真を撮り忘れましたが、このギアホイール内部にワイヤーの両端が結び付けられています。それらを解いてワイヤーを交換するのですが、ここの結びが結構難解。しかも交換の際はワイヤーを通す穴が意外と狭く、ワイヤーの端を穴に通す際にはワイヤーのエッジがナイロン地に引っかかってしまうため、かなりイライラさせられます。
同じように戻し、再度ドライバーを使ってダイヤル部を締めれば交換完了です。
締め付けやリリースなど、正常に動くか再度確認してください。
スペアワイヤーと応急処置
緊急時の対応については下記二通りの方法があるとされています。
- ワイヤーレースの破損(切断等)
⇒スペアワイヤーの利用 - アジャストダイヤルの破損
⇒スペアシューレースの代用⇒実質不可!⇒結束バンド等の利用
前者は上述の手順でワイヤーを交換する場合。これが基本にはなると思いますが、細かい手先の作業で交換にはそれなりに時間がかかりますし、時間的な余裕が無い場合や荒天時などは悠長に交換している暇は無いかもしれません。何より細かなところでイライラさせられます。
そんな時には通常の靴紐(シューレース)にて代用することも可能・・・と説明書上は記載されています。ワイヤーレースが通る穴は通常の靴紐も通せるような設計になっているとのことですが、これ実質困難です。穴が小さすぎます。甲の中央あたりは辛うじて通せますが、上部と下部は通常の靴紐はまず通すことができません。
上の写真は同じくmont-bell製品の子供登山靴「ティトンブーツkid’s」に使用していた靴紐ですが、それですらとすべての穴に通すことはできず、通せたのは写真の箇所のみです。もっと細い靴紐であれば通せるかもしれませんが、緊急用に自社製品のシューレースが使用できないというのは設計上致命的ではないかと思います。
エマージェンシーとしては結束バンド(インシュロック)を使用するという方法が無難だと思われます(上の写真)。結束バンドは色々な用途に使うことができ、登山においても様々なシチュエーションで利用できるため、私は常にファーストエイドキットの片隅に忍ばせています。締め上げという面では最低限なので本当に最後の手段となりますが、無いよりは遥かにマシです。通常結束バンドは緩めることができないので抜く際はニッパーやナイフ、ハサミ等で切断する必要があります。
リピート可能な結束バンドも市場には出回っていますが、一般的に幅広なものが多く、レース穴に通らないものがほとんどです。
クリーニング時の注意
基本的には他の登山靴を変わらないクリーニングです。防水透湿仕様なので基本は外側やソールの汚れを落とします。内部に浸水させるような洗い方はNGです。
一点だけ、リールアジャスト部は小石などのゴミが入り込むとアジャスト機能そのものが機能しなくなることもあるのでクリーニング時には注意してください。
まとめ
靴紐の締め方を憶えさせるというのも重要な命題ではありますが、山という限定的な状況においては登山靴の着脱や締め上げの調節が容易にできるに越したことはありません。通常の登山靴よりは割高となりますが、この容易さを考えればコストに見合ったものだと思います。
特に子供一人では靴紐の調整もままならないことが多いですし、ちょっとしたことで靴内への小石の侵入を許すことがあり、気になるとなかなか登山に集中できないこともあります。それを負担をカバーするのは大抵親の仕事となりますので、これであれば親の負担軽減にも繋がります。
一方で、均等すぎる締め付けゆえの指先の痺れの可能性についてもまだ一抹の不安は残っており、一概にオススメするにはまだまだ経験値が不足している現実もありますので、数か月後にその使用感についてのレビューができればと思っています。
ワイヤーレースの交換はハッキリ言って超面倒くさいと思いました。山行中に切断してしまった際にその場では絶対交換したくないなぁと思いますし、イザという時は結束バンドで対応するしかないかなぁと。この辺りが後継製品でどう改善されているかはとても気になるところです。
まぁ交換はかなり稀なケースなので、メリットのほうが大きいような気がします。しばらく使ってみて、大きなトラブルになりそうな痺れの発生などがなけれ、総じて良い買い物になっているかもしれません。
なお冒頭でも触れましたが、本記事執筆時点でこの商品はアウトレット扱いになっており、現在は「ラップランドブーツ リールアジャスト Kid’s」が後継製品となっております。詳細な比較はしてませんが、一瞥した限り大差はないと思われますので、購入を検討されている方はそちらも参照してみてください。
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