アルカスイス互換のReallyRightStuff(RRS)製 EOS 5D Mark IV専用Lプレート(Lブラケット)のレビューです。
目次
Lプレートのススメ
縦/横構図の素早い切替を実現
一番の理由は何といってもまずはコレ。通常三脚を使用した撮影を行う場合、横構図から縦構図に切り替えるにはカメラ本体ではなく雲台を水平方向90度に傾ける必要がありますが、これがかなりの手間。3way雲台、自由(ボール)雲台、ギア雲台いずれを用いたとしてもこの切り替えというのは非常に手間がかかる作業になります。
Lプレート(Lブラケット)を使用することで、カメラをクランプから外す⇒90度傾けてクランプに固定するだけで縦横構図を切り替えることができます。
構図の崩れ防止
さらに、Lプレートには「構図の崩れを防ぐ」という効果もあります。具体的には・・・
これはランドスケープ(横構図)でファインダーの中央のMAMMUTのロゴを捉えた状態です。この状態でポートレート(縦構図)に切り替えたくなった場合、雲台には全く触れずにクランプからカメラを外し、縦向きにしてクランプに設置すると・・・
この通り、ロゴの位置がファインダーの中央を維持したままとなります。ところがLプレートを使わずに、カメラを雲台に固定したまま雲台を90回転させると・・・
こんな感じに。ロゴはすでにファインダーの外。上の写真は効果を強調するために被写体との距離を非常に短くしていますが、イメージは付きやすいかと思います。
ここから再度構図を作るのはとても手間で、雲台の調整はおろか三脚のロケーションも含め再度練り直さなければなりません。また多くの場合水平も取り直すことになりますが、Lプレートを使うことでこれらの手間が解消されます。
“おじぎ現象”の防止
Lプレートを使用せず雲台のロールだけで縦構図を取ろうとすると、”おじぎ現象”に遭遇することもあります。
上の写真のスライダーを左右に動かしてみてください。カメラ本体と雲台を固定するクイックシューの接触面がカメラ+レンズの重さに耐えられず、文字通り”おじぎ”してしまう現象です。フロントヘビーになるほど顕著になります。
沢での撮影や数十秒程度の露出時間の星景撮影であれば、わずかなおじぎには気付かないかもしれませんが、数十分~数時間の星景撮影やタイムラプス撮影などでは大きな痛手となります。最悪その日の撮影が無駄になってしまうなんてことにもなりかねません。
そんな事態を避けるためにも、Lプレートはとても有効です。
RRSならではの高い品質
長い前置きとなりましたが、ここからようやく製品のレビューです。
高い加工精度と細かな配慮
RRS(Really Right Stuff)社製品のウリと言えば、やはり非常に高い加工精度と完成度の高い製品設計です。
作りは非常に丁寧で、触れる部分はすべて丁寧に磨かれており、バリのようなものも一切ありません。
プレートには縦位置でも横位置でもセンター位置が一目でわかるようになっています。レーザー刻印のため簡単にはがれてしまうようなこともありません。
六角レンチ収納スペース
ベースプレート部には固定に使用する六角レンチが収納できるようになっています。この手の六角レンチは、いざ持ち運ぶとなると収納場所に困るため、プレートとセットで持ち運べるというのは有り難いです。またプレート本体に磁石が埋め込まれており、移動中に六角レンチが落ちてしまうという心配もありません。こういう配慮がさすがだなぁと思います。
また、この六角レンチはサイズ的にもPeakDesignのCaptureに使用するものと同じサイズなので、こちらも棚ぼた的効果。
専用モデルゆえの配慮
Lプレートにはどのメーカーのどのカメラにでも大体使用できる汎用的なものと、特定の機種限定で設計されたものの二種類があります。前者は比較的安価でツブシも効きますが、汎用品ゆえに大味です。今まで使用していたのがこちらでした。一方後者は機種限定に設計されたものなので、フィット感やカメラそのものの機能を潰さないような細かな配慮がされていることが多いです。もちろん専用品なので他機種では使用できません。
メーカー純正のようなフィット感
5D Mark IV 専用かつRRS製ということで、まるでメーカー純正品であるかのようなフィット感。ガタつきなどはもちろん無駄のない作り。
バッテリースロットへのアクセス
汎用タイプのLプレートであれば、固定するとバッテリーをスロットから取り出せないというものもありますが、専用タイプであればそんなこともありません。
入出力端子のアクセス
実際これらのI/Oパネルを使用することは私はほとんどないのですが、これらの入出力端子へのアクセスにも影響を与えません。また、ベースプレートとLコンポーネントをずらして幅を設けて固定することで、大型の端子でも使用しやすくなっています。
購入時の注意
RRS製のLプレートを購入する際は、いくつか選択と組み合わせがあることを留意しておいてください。
- ベースプレート(カメラ底面に装着)のみかどうか
- Lコンポーネント(カメラ側面に装着)も必要か
- バッテリーグリップを使用するか
によって製品構成が異なります。今回私の場合はベースプレート&Lコンポーネント、バッテリーグリップ無しで購入しています。
アルカスイス互換
このLプレートはアルカスイス互換なので、同互換のクランプであればどのようなものでもセッティング可能です。私の場合クランプもRRSのものを使用しているので相性はバッチリ。中央部のマークも同じなので視認しやすいです。
Lプレートの溝を利用することで、クランプを完全に緩めなくてもスライドして引き抜くこともできます。私のクランプはスクリュー式ですが、ほんの半回転だけでも引き抜くことができます。加工精度の高いRRS製品なので、この辺りの引き抜きでも引っかかるようなことがなく、畏敬の念さえ抱きそうになるスムーズさ(笑)です。
PeakDesign製品との相性は
PeakDesign大好きな私ですが、各製品との相性はどうでしょうか?
キャプチャー
まずキャプチャーに関しては判断が難しいところがあります。一応、キャプチャーのカメラプレートのネジと同じ径のネジ穴があるのですが、カメラの中央部に来ません。これはキャプチャーのカメラクリップに装着して運搬する際にどの程度影響があるか未知数で、現在検証中です。
まず、中央部より少し右にずれたところにネジ穴があり、ここにキャプチャーのネジが締められるようになっているのですが・・・
装着するとこの通り。中央からかなり離れているので、キャプチャーのクリップに装着しての運搬時にバランスが崩れないか?という懸念があります(※現在検証中です)。
そこでせめてもの工夫として、少しでも中央に寄せられるよう、プレートのネジをギリギリまで端に寄せます。
ほんのわずかですが、中央に寄りました。
スライダーを動かすと微妙な違いが分かるかと思います。本当に微妙ですけどね。
仮に運搬に困らなかったとして、次にアルカスイス互換クランプへの取り付けですが、ここでも注意が必要です。
クランプの中央位置とLプレートの中央位置を合わせようとすると、写真のような50mmのクランプだとかなりギリギリです。
なんとか乗ってはいますが、半分はクランプの外となり、剛性に少々の不安が残ります。最低でも60mm、余裕をもって80mm以上のクランプサイズが欲しいところ。
・・・というわけで、キャプチャーに関しては
- 運搬時のバランス
- クランプ設置時の剛性
ということを考慮すると、必ずしも「相性バッチリ」とは言い難いですが、唯一バッチリといえるのはLプレート本体に格納できる六角レンチでしょう。いざとなったらキャプチャーは外してしまえば良いのですから、その時にスッとレンチを取り出せるのは意外とメリットかと思います。
クラッチ
続いてクラッチですが、こちらは併用可能でした。ベースプレートの端にアンカーリンクスを結束できるループがあるので、クラッチは問題なく併用可能です。
スライド/スライドライト
最後にスライドですが、こちらも併用可能です。Lプレート(のLコンポーネント部分)取り付けの際に、カメラ本体のストラップホールは潰されてしまうのですが、その分Lプレートの上端にストラップホールとなるものが実装されていて、それを利用することでアンカーリンクスを結束することができるので、結果としてスライドが利用できることになります。ここでもRRS製品のちょっとした配慮というものが見え隠れしていますね。
Lプレートを使った撮影というのは基本三脚に固定したままなので、それ以外の移動の際にこれらPeakDesign製品を使うことを考えると、スライドとの組み合わせが頻度としては一番多いのではないかと思います。
装着時の注意
専用設計ゆえに装着は無駄なくピッタリなのですが、裏を返せばピッタリすぎるということもあり、装着時にはちょっとしたコツが要ります。
まず最初に、Lコンポーネント部上部の2つのツメを・・・
カメラ本体のストラップホールに斜めに引っ掛けるように入れ、そのままLコンポーネント部をベースプレート部分と合わせるようにします。
ここで、最初のLコンポーネント部上部の金属パーツのネジをしっかり緩めておかないと、キレイにベースプレートと合わないのでご注意ください。これがかなりきわどく、RRS製品としてはもう少し余裕を持った設計にしても良かったのではないかと、唯一残念に思った点でした。
(2019.6.27 追記)
上記の手順は正規の手順ではあるのですが、Lコンポーネントとベースプレートは結合した状態でもカメラ本体に取り付けられるということがわかりました。※後述します。
Lコンポーネント部とベースプレートがピッタリと合えば、あとは六角レンチとネジで固定します。
その後わかったことですが、Lコンポーネントとベースプレートは事前に結合させたままでもカメラ本体に装着できました。
ポイントは、ストラップホールに固定する金具を事前に緩めておく際に、右の写真のようになるべく(ネジでないほうの)金具を浮かせておくことです。この微妙なさじ加減が後々響いてきます。
このままカメラ本体と密着させると・・・
Lコンポーネント側の穴から、三脚固定用のネジを締められます!これが盲点でした。
最後にLコンポーネント部の金属パーツを固定して完了です。慣れるまで少々コツが必要なので、実戦投入する前に何度か着脱の練習をしておくと良いと思います。
まとめ
特に星景撮影のような場面では役に立つと思いますが、普段の山岳撮影の時にも十分使えるとは思います。
PeakDesignのキャプチャーとの相性に関してはとても重要なところなので、近日中に検証結果を更新したいと思います。択一となると利用場面は限られるかもしれません。
そんな理由でカメラ二台体制に憧れたりするようになったレビューでした。
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